本、読み終えた。シェリル・ストレイド『わたしに会うまでの1600キロ(原題:WILD)』
これは親の離婚、母の死、家庭崩壊、ヘロイン中毒などで人生をボロボロにした人が、直線距離1600km、実際の距離約4300kmを歩く話だ。
パシフィック・クレスト・トレイル(略称:PCT)
アメリカ=メキシコ国境~カナダ国境まで、アメリカ西海岸の山脈を通るトレイル。
日本人も結構行っているみたいで、費用は100万円前後かかるみたいです。
(画像引用元:Binoculars in the Backcountry: PCT
)
暑い場所もあれば、積雪によって迂回することもあるようです。
そんなトレイルを彼女は登山歴なしで突っ込んでいきます。
そう、モデルはたった一人の女性です。
というか、本人がこの本を書いたらしい。
ふとした瞬間にPCTのことが書かれていた本を買った彼女。
でもそのとき、彼女の人生はほとんど終わっていた。
ー(略)、私はとうとう泣き出した。望まぬ妊娠だけでなく、何もかもがやりきれなかった。母が死んで以来、人生を泥沼にしてしまったこと、人間のクズになりさがったことを悔やみ、ハンドルを握るのもままならないほどむせび泣いた。こんなふうに生きるつもりじゃなかったのに。こんなふうに堕ちるつもりじゃなかったのに。
(P67-68)より引用
私も害虫駆除会社の社長に退職願を提出した帰りの車中でむせび泣いた。
自分はなんてダメな奴なんだ。自分よりも3つ4つ年下のほうが仕事できる。忘れ物するわミスするわ車ボコボコにするわ……。頑張ろうと思っていたのに。こんなことになるはずじゃなかったのに。
歯を食いしばったが間に合わず、唇が震えた。ハンドルを叩いた。クラクションが笑うように短く鳴った。
「クソ…泣くなよ。やっただろ。やったよ。泣くなよ…クソ」と言ったことを覚えている。退職後3カ月くらいは仕事で使っていた車を見ると吐き気を催した。仕事をすること自体にトラウマを覚えて、在宅ライターと日雇いバイトの生活に戻った(今はフリーター)
社会でのツライことを吹き飛ばしてくれたのは自然だった。自然はあるようにあるだけ。怒らないし、叫ばないし。罪悪感を覚える対象はどこにもない。楽しい。そして不意に現実はやってくる。
何度かそれを繰り返すと、受け入れられる時が来る。
自分が満たされているから、泣いているのだ。トレイルの苦しい五十数日を、その前の九千七百六十日を、思う涙だった。
(P279より引用)
出合う人々によって手助けされてトレイルに馴れていくシェリル・ストレイド。
でも結婚間近にしてそれをぶっ壊した自分の罪と、自分への非難と現実。
愛していた母親の死。一家離散。
トレイルを歩く中で楽しいと思うことがあれば、急に現実に連れ戻される彼女。
考える時間はたっぷりある。だから苦しい。
独りで叫ぶこともある。
でも彼女がやったように、社会での問題は社会の中ででしか解決できないんだ。
人に傷付けられたら、人と接することでしか解決できないんだ。
私も頑張ろう。そう思える一冊だった。
トレイルに興味がない人でも、逃避行を試みる人にはオススメだ。
また実際に長距離ハイクへ行こうというなら、『ウルトラライトハイキング』が分かりやすくてオススメだ。
決して、決して、決してあきらめるな。
(P205より引用)
私の歩みは遅いが、決して引き返さない。
(P281より引用)
本、読み終えた。クリストファー・マクドゥーガル『NATURAL BORN HEROES 人類が失った”野生”のスキルをめぐる冒険』
Natural Born Heroes: The Lost Secrets of Strength and Endurance
- 作者: Christopher McDougall
- 出版社/メーカー: Profile Books
- 発売日: 2015/04/16
- メディア: Kindle版
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ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生"のスキルをめぐる冒険
- 作者: クリストファー・マクドゥーガル,近藤隆文
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/08/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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クリストファー・マクドゥーガルといえば、『BORN TO RUN』で世界的に有名になった作家・ジャーナリストだ。
ベアフットランニングの火付け役となった。
BORN TO RUN 走るために生まれた ―ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”
- 作者: クリストファー・マクドゥーガル
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/07/31
- メディア: Kindle版
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Born to Run: A Hidden Tribe, Superathletes, and the Greatest Race the World Has Never Seen
- 作者: Christopher McDougall
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2011/03/29
- メディア: ペーパーバック
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書店では『BORN TO RUN』は置いてあるのに他は置いてないことが多かったのでアマゾンで購入した。
『BORN TO RUN』では人間は本来、裸足で活動していたのだから色々ゴチャゴチャと変な機能がついているシューズはいらないという趣旨だった。
登場したララムリ族は古タイヤを加工してサンダル風(ワラーチ)にしたものを履いていた。
現代的なシューズとララムリ族のワラーチ、なぜか前者のほうが体の故障率は抜群に高い。
それを語ったのが『BORN TO RUN』だった。
今回の『NATURAL BORN HEROES』は脚から範囲を広げて人間本来の体の機能に着目したものとなっている。
主軸は2つ。
- 1つは第二次世界大戦中、ドイツ軍の将軍誘拐に成功したナチュラルムーブメントを身に着けていた人たちの話。分量としてはこっちがメイン。
- もう1つはそのナチュラルムーブメントを今の我々はどれほど失っているのか?という話だ。
ナチュラルムーブメント。これだ。
これを知りたければ読むべきだ。
ナチュラルムーブメントに関しては動きというよりは医学的な観点での語りが多い。
- 筋肉を覆うようについている筋膜の力
- 障害物を自然な流れで乗り越えるパルクール
- 筋トレやヨガやダイエットのバカバカしさ
- 人間の五感の可能性
- 炭水化物と糖分の危険性と脂肪という栄養
- スポーツ界における過剰な水分摂取
といったことが書かれている。
特に脂肪と水分摂取は個人的に読みごたえがある。
炭水化物と糖分はキツい。でも脂肪なら。
脂肪は人間が必ず蓄えている栄養だ。
そして炭水化物と糖分はすぐに燃料が尽きる。
スポーツ界における行動食にも種類があって、炭水化物中心・糖分中心・そしてなんと脂肪中心のものもある。
そして大抵小売店で見るのは炭水化物と糖分だらけのものだ。
体脂肪率が低いと風邪とかひきやすくなる。
それは人間にとってヤバいのは明らかだ。
蓄えていた栄養を削ぎ落すというのは現代の恵まれた食糧事情があってこそだ。
ほどほどの体脂肪がNATURALなんだ。
そして水分摂取の話。
もちろん日本では部活とかで熱中症で亡くなる学生もなんだか毎年のように出てしまう感覚だから、水分摂取の重要性は当然ある。
だがそれにも限度がある。
飲み過ぎると水分が脳に溜まってしまって死ぬ可能性がある。
著者が調べると、水分摂取が少なかった過去のマラソンイベントと現代のそれでは過去のほうが死亡率が極端に低かったらしい。
人間は何のためにのどが渇く?
「水が少ないぞ~」と体が指示するからだ。
コーチでも指南書でもなんでもない、自分の体が教えてくれる。
スポーツ医学ではのどが渇いたと感じたら既に軽度の脱水症状だ、なんて言っている。
本当にそうだろうか?
人間の内臓はとんでもなく緻密なのにミニマムな化学工場だ。
なのに感覚に関しては過小評価している。
産業は売る努力が必要だ。
それは時に人間の体さえも蝕む。
化粧品やら食品やらでやらかした企業があるだろう。
企業や専門家の営業文句よりも、まずは自分の肉体に耳を傾けよう。
私たちはあまりにも知らないことに対して自信がなさすぎる。
自分のことなのに。
そう思うと感覚を磨きたくなってきた。
こういう現代スポーツ医学の幻想とか好きだな。
それで古代のスキルに焦点を当てる。
『サピエンス全史』とかもそういう類だと思う。
行動食レビュー:株式会社 天狗堂宝船(製造者)『Enemoti』
ENEMOTI (エネモチ) 栄養補助食品 エネもち たんぱく質やビタミンが豊富に含まれた栄養価の高いエネルギー食。
- 出版社/メーカー: ENEMOTI (エネモチ)
- メディア: その他
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こんな行動食を作るのは日本しかない。
製造は天狗堂宝船だが、販売はあの『Mag-on』を売っているシーオス株式会社だ。
さてこれは水あめ、砂糖、小麦粉、もち粉、あん、醤油、クルミなどで作られている。
そしてゆっくり吸収される糖質『パラチノース』により、エネルギーを長く供給してくれる。
「えー?絶対ベタつくやーん」
ところがどっこい、オブラートで包まれているのでベタつきが全くない。
またそれによって中にクズがボロボロと落ちることもない。
そしてこの包装紙も評価したい。
お菓子の袋のように開くので、切ったゴミが出ないのだ。
このゴミ落ちないかな?とか、中の余ったやつでベタベタにならないかな?というのが全くない。
個人的にストレスフリーな行動食だ。
対して原材料からして明らかだが、なかなか噛み応えがある行動食になっている。
少しでいいから飲み物が欲しくなる。
包装紙を開いてもベタつきがないことから、少しずつ食べるという使い方もできる。
他のジェルなどではそういう使い方はできない。
糖分によるエネルギー補給は、しばらくこれを使おうかなと思う。
安いしね。
人によってはおにぎりを行動食として握ってくる人もいるが、これで代用もできそうだ。
唯一文句をつけるなら、クルミが歯茎に挟まったら気になることだろうか。