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生物に「どうしてお前はそうなんだ?」と問いかける。

小売りの現場は人手不足なのに経営陣は危機感がなさすぎるという事例

 

店長とスタッフのための  売場づくり 基本と実践 (DO BOOKS)

店長とスタッフのための 売場づくり 基本と実践 (DO BOOKS)

 

 

 社員の方が録画された会議の様子を事務所で観ていたところから始まる。

ゴワゴワとしたおっさんの声が事務所に響く。
「現場は人手不足だ人手不足だと言うが……(云々)なんとかやっている」
経営陣(?)はやっぱり現場を知らないんだな、と思った。
 
 私のところはサッカー、野球、テニス、バドミントン、バレーボール、ランニング、キャンプ、登山と多岐にわたるポーツ用品が販売されている。
 で、夜になると本当に人がいない。
夕方に主婦陣が退勤すると、それ以降は基本的に4人で回している。
1人は確実にレジだ。
 だから3人でその他のスポーツの担当を兼任することになる。
これを人手不足と言わずしてなんであろうか。
他3人が全員接客していたら接客を待たなけれなならないのだろうか?
どう考えてもおかしい。
「3人:8つのスポーツエリア」がイコールなわけがない。
上は勘定の仕方がわからないらしい。
 
 
 

人手不足だと思う理由7つ

 私は「なんとかやっている」は完全に人手不足だと思っている。
その理由を主張する。
人手不足だと何が起こるか。
現場レベルでは以下のことが思いつく。
  1. 商品知識の不足した店員による接客
  2. 商品があるかどうかの判断がつかないことによる販売機会の損失
  3. 品出しの遅れによる荷物の山積と販売機会の損失
  4. 店員の不安感増大と日常的負担
  5. 大企業にありがちな丸投げ
  6. ハイセンスな面構えを維持できない
  7. (質的に)意識高い系の人と低い人の二極化
 
 
1、商品知識の不足した店員による接客
 これは最悪お客様のケガや病気の原因にもなる。
また返品や交換によるレジの負担が増える。
店員はしどろもどろになるし、お客様はそれを見て店全体を評価する。
 
 
2、商品があるかどうかの判断がつかないことによる販売機会の損失
 私もやってしまったことがあるが、専門外の商品があるかどうか聞かれてそのスポーツのコーナーを探してもなかった。
だが後であるとわかったパターン。
 担当がいない場合は最悪店全体を探す。
お客様を待たせるのは必然になる。
社員の方も全ての商品を把握しているわけではない。
 
 
3、品出しの遅れによる荷物の山積と販売機会の損失
 担当でないスポーツコーナーの商品を勝手に品出しするわけにいかない。
既に同じ商品があれば品出しは可能だが、いつもそうであるわけではない。
人手がほしいのは季節ごとの新商品が品出しに加わるときだ。
防犯防止のセンサーを付けるにも手間がかかる。
しかもそれが足りなくなることもある。
売り場確保のためにも什器を組まなければならないときもある。
 
 
4、店員の不安感増大と日常的負担
 こんな経験がないだろうか。
  • 靴を買いに来たのに、希望のサイズを店員が見つけるのに時間がかかりすぎている。
  • 質問をしたら「少々お待ちください」と言われてどこかへ消えて数分待たされる。
 こういうときは店員も不安だ。
それが日常的に続けばある程度対応力が身に付くが、売り場を大きく変えるのはその売り場の担当者だ。
いつの間にか変わってるなんてこともよくある。
情報交換を成功させるためには知識レベルが近いことが求められる。
 
 
5、大企業にありがちな丸投げ
 売れない商品が大量に入ってきたことがあった。
メーカーは言わないがメッセンジャーバッグだ。
そんな商品を優先して大きな売り場を作って売りさばくなんてできない。
無意味だし自殺行為だ。
結局段ボールに詰め直して裏の棚に封印した。
また裏が段ボールだらけになったということだ。
 契約上仕方ないかもしれないが、売り場面積が拡大されるか半額レベルに値引きされないと売れないだろう。
現場は「鬱陶しいもの投げんなクソが」と本気で思っているし、口にも出している。
チェーン店で日常的にこんなことされたら溜まったもんだじゃない。
 山積みにするしかなくなるし、お客様が気軽に商品を取れない。
来たなら仕方ないとして商品を陳列すると、悪い意味でゴチャゴチャした感じになってしまう。
 
 
6、ハイセンスな面構えを維持できない
 人手不足により発生する問題で個人的に一番危惧しているのがこれだ。
店員がいろいろ作業しているのを見たことがあるだろう。
値段のシールを張ったり、什器を組み立てたり。
大抵平日に行けばやっているのを見られると思う。
 うるさかったり、物が邪魔だったりしないだろうか?
なぜお客様がいるところで作業しているかというと、いつでもお客様の対応ができるようにするため、らしい。
人手不足でなかったら裏で作業するのが良いと思う。
音量的、物理的にお客様への迷惑を最小限にするにはそうするしかない。
接客と作業を役割分担するのだ。
 しかもこれには副次効果がある。
言い方は誤解を招くかもしれないが「如何にして仕事してない風を装うか」といい解決にもなる。
小奇麗に見えるし、売り場でゴミが散乱することもないからだ。
高級品店で段ボールやバラバラになった什器が置かれているのを見たことがあるだろうか?
ほとんどの人は「ないかも?」と予想する。
 また作業している人に声をかけずらいという人はとても多い。
「すみません……大丈夫ですか?本当に?…あ、すいません。トレッキングポールで聞きたいことがあるんですけれども…」
みたいな。
ここで店員が「すみませんが作業中なんで後でお願いします」って言えるわけがない。
お互い申し訳ない。
上にいるスーツ組はこういう機微に気づいていない。
だから「なんとかやっている」なんてことが言える。
問題があり続けていることを指摘できないんだ。
 
 
7、(質的に)意識高い系の人と低い人の二極化
 「私が頑張らないと」
趣味を通じて知識があって、業務もこなせる人はそう考えざるを得ない。
また業務にはそれを行える人が決まっていることが普通だ。
例えば現金管理、レジでの特殊な業務(返品、交換など)がそうだ。
逆にそれを許されていない人は「しなくていい」
だから「しなくていい」というパイが少しずつ大きくなる。
電話にも出ない。
「どうせ知らない内容だろうから、最初から知ってる人が出ればいい」
これはアルバイトによくあてはまる。
 でもアルバイトの中には社員並みにほとんどのことができる人も確かに存在する。
結果、お客様が少ないときでも忙しい人と談笑し合うアルバイトの二極化が生じる。
また全員がスポーツが好きで働いているわけではない。
これは地方ほど顕著だろう。
 
 
 

人手不足の感じ方

 以上から私が考える人手不足とは、単に上が考えている売上に貢献できないほどの状態の人手不足というわけではない。
「お客様に気持ちよく買い物してもらうだけの人員が確保できていない」という意味での人手不足なのだ。
店員が忙しく店内を走り回っているような接客が良いと言うお客様が大多数ではないと信じたい。
 これは売上が全ての上と、売上が昨年対比で100%越えを達成しても時給が上がることも一時金がもらえることもない現場との違いにより生じている。
企業にありがちな典型例というわけだ。
 
 
 

上はおかしい

 寄り道だが、なぜかうちの上は「新商品」「クリアランス」などを景品表示法の関係から表示として出すなというお達しがあったらしい。
だったら他の小売りからもその文言が続々と消えないとおかしい。
完全にガラパゴス化の方向に行ってる気がする。
これって会社が潰れる兆候の一つでもある。
本で読んだよ。