本、読み終えた。クリストファー・マクドゥーガル『NATURAL BORN HEROES 人類が失った”野生”のスキルをめぐる冒険』
Natural Born Heroes: The Lost Secrets of Strength and Endurance
- 作者: Christopher McDougall
- 出版社/メーカー: Profile Books
- 発売日: 2015/04/16
- メディア: Kindle版
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ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生"のスキルをめぐる冒険
- 作者: クリストファー・マクドゥーガル,近藤隆文
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/08/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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クリストファー・マクドゥーガルといえば、『BORN TO RUN』で世界的に有名になった作家・ジャーナリストだ。
ベアフットランニングの火付け役となった。
BORN TO RUN 走るために生まれた ―ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”
- 作者: クリストファー・マクドゥーガル
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/07/31
- メディア: Kindle版
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Born to Run: A Hidden Tribe, Superathletes, and the Greatest Race the World Has Never Seen
- 作者: Christopher McDougall
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2011/03/29
- メディア: ペーパーバック
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書店では『BORN TO RUN』は置いてあるのに他は置いてないことが多かったのでアマゾンで購入した。
『BORN TO RUN』では人間は本来、裸足で活動していたのだから色々ゴチャゴチャと変な機能がついているシューズはいらないという趣旨だった。
登場したララムリ族は古タイヤを加工してサンダル風(ワラーチ)にしたものを履いていた。
現代的なシューズとララムリ族のワラーチ、なぜか前者のほうが体の故障率は抜群に高い。
それを語ったのが『BORN TO RUN』だった。
今回の『NATURAL BORN HEROES』は脚から範囲を広げて人間本来の体の機能に着目したものとなっている。
主軸は2つ。
- 1つは第二次世界大戦中、ドイツ軍の将軍誘拐に成功したナチュラルムーブメントを身に着けていた人たちの話。分量としてはこっちがメイン。
- もう1つはそのナチュラルムーブメントを今の我々はどれほど失っているのか?という話だ。
ナチュラルムーブメント。これだ。
これを知りたければ読むべきだ。
ナチュラルムーブメントに関しては動きというよりは医学的な観点での語りが多い。
- 筋肉を覆うようについている筋膜の力
- 障害物を自然な流れで乗り越えるパルクール
- 筋トレやヨガやダイエットのバカバカしさ
- 人間の五感の可能性
- 炭水化物と糖分の危険性と脂肪という栄養
- スポーツ界における過剰な水分摂取
といったことが書かれている。
特に脂肪と水分摂取は個人的に読みごたえがある。
炭水化物と糖分はキツい。でも脂肪なら。
脂肪は人間が必ず蓄えている栄養だ。
そして炭水化物と糖分はすぐに燃料が尽きる。
スポーツ界における行動食にも種類があって、炭水化物中心・糖分中心・そしてなんと脂肪中心のものもある。
そして大抵小売店で見るのは炭水化物と糖分だらけのものだ。
体脂肪率が低いと風邪とかひきやすくなる。
それは人間にとってヤバいのは明らかだ。
蓄えていた栄養を削ぎ落すというのは現代の恵まれた食糧事情があってこそだ。
ほどほどの体脂肪がNATURALなんだ。
そして水分摂取の話。
もちろん日本では部活とかで熱中症で亡くなる学生もなんだか毎年のように出てしまう感覚だから、水分摂取の重要性は当然ある。
だがそれにも限度がある。
飲み過ぎると水分が脳に溜まってしまって死ぬ可能性がある。
著者が調べると、水分摂取が少なかった過去のマラソンイベントと現代のそれでは過去のほうが死亡率が極端に低かったらしい。
人間は何のためにのどが渇く?
「水が少ないぞ~」と体が指示するからだ。
コーチでも指南書でもなんでもない、自分の体が教えてくれる。
スポーツ医学ではのどが渇いたと感じたら既に軽度の脱水症状だ、なんて言っている。
本当にそうだろうか?
人間の内臓はとんでもなく緻密なのにミニマムな化学工場だ。
なのに感覚に関しては過小評価している。
産業は売る努力が必要だ。
それは時に人間の体さえも蝕む。
化粧品やら食品やらでやらかした企業があるだろう。
企業や専門家の営業文句よりも、まずは自分の肉体に耳を傾けよう。
私たちはあまりにも知らないことに対して自信がなさすぎる。
自分のことなのに。
そう思うと感覚を磨きたくなってきた。
こういう現代スポーツ医学の幻想とか好きだな。
それで古代のスキルに焦点を当てる。
『サピエンス全史』とかもそういう類だと思う。