本、読み終えた。小林照幸『死の貝』
目次
第1章 死体解剖御願
第2章 猫の名は“姫”
第3章 長靴を履いた牛
第4章 病院列車
第5章 毛沢東の詩
第6章 果てしなき謎
(『やまかいの四季 住血吸虫病って何だろう』 山梨県教育委員会峡南教育事務所地域教育推進担当)
http://www.ypec.ed.jp/yamakai/yamakai%2086.html より抜粋
『中の割に嫁に行くには 買ってやるぞ 経帷子に棺桶』
『竜地 団子に嫁に行くには 棺桶を背負って行け』
(甲府盆地、口碑)
上の画像は日本住血吸虫症が悪化した患者の例です。
こんなことになる病気が日本にあったとは、露程も知りませんでした。
しかも日本の一部にはまだこの元凶、ミヤイリガイがいる。
そして中国、フィリピン、インドネシアでは2016年でもこれと戦い続けている。
この本はミヤイリガイと日本住血吸虫症を撲滅するために奔走した人々を描いたものです。
この人の本はどれもハズレがないと思っているくらい私のお気に入りのノンフィクション作家の方です。
文章を読んでもミチミチとした濃い時間経過を感じる文章なのに、無駄なものがなく読みやすい。
少し医学的な内容もありますが、それも逐一説明が付いてくるのでつまずくことはありません。
この人の本でいつも思うのは、
- 手に汗握る。プロジェクトX感。
- 登場人物の情熱。もらい涙。
- 細かな説明を嫌にさせない文章。
脱線気味ですが、この人の本は本当にオススメしたい。
川に行くと小さな貝類はたくさんあります。
オオタニシ、カワニナ、ドブガイ、マシジミなど……。
しかしミヤイリガイのような小さな貝はほとんど見かけません。
あったとしても成長途中のカワニナです。
苦慮しながらも対応する官と情熱をひた向きに執念を傾ける民の協力がなければ、川に飛び込める今はなかったかもしれません。
そしてこの本を読んで新たな見識を持ちました。
それは河川のコンクリート化の必要性です。
後半、ミヤイリガイの撲滅にコンクリートが有効であるとされたのです。
たとえば田んぼの灌漑用水路をU字コンクリートにすれば、川の流れが速くなり産卵が難しくなる。
管理をすれば植物も生えてこない。
結果、直射日光が当たり水温が上昇、ミヤイリガイが棲めなくなる。
私はコンクリート化していく河川が嫌でした。
生体系豊かな河川が大好きです。
しかしこのような面もあるのだという見識を得ることができました。
一方でミヤイリガイとホタルの生息域は似ていると言います。
どちらの種もきれいな水でなければ生きられないということです。
この観点からミヤイリガイを完全撲滅するのではなく、お互いの生息環境を分離させるという考えになっています。
私もこれに賛同します。
毒があるからと言って遠ざけていれば、未来はないと思うからです。
現在、ミヤイリガイ(カタヤマガイ)は福岡県・広島県において絶滅、静岡県・千葉県で絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)です。
このカテゴリーは「絶滅の危機に瀕している種」です。
大切にしたいですね。